AERA 2024年1月1-8日合併号(AERAドット、ヤフーニュースにも掲載)に、
ひきこもり問題の権威、精神科医の斉藤環のインタビューが掲載されています。
記事の一部を引用します
世界中で、戦争や紛争が起きている。どうすれば戦争を止めることができるのか。精神科医で筑波大学教授の斎藤環さんは、「『開かれた対話』が役立つ可能性がある」と指摘する。
(中略)
戦争を止めるにはどうすればいいか。これには、精神科の臨床現場で効果が実証されつつある「オープンダイアローグ」という「開かれた対話」が役立つ可能性があると考えています。例えば、ロシアとウクライナ、イスラエルとハマス、それぞれ中枢にいる人間が輪になって対話を重ねていくのです。ただし「対話」といっても、説得や議論ではありません。
対話の条件は次の通り。完全な密室で行う、対話の内容は報道されない、結論を出さない、結論が出てもさしあたり政策には反映させない──などです。
結論をなぜ出さないかと言えば、結論を出すということは、結論が政策に反映されると考えるからです。その結果、話し合いは建前のぶつかり合いになってしまうでしょう。戦争をしている両国が互いの大義をぶつけ合うだけでは対立を乗り越えることは難しいと思います。
話し合うのは、いま感じていること、いま思っていることです。つまり、主観と主観の交換であり、互いの主観の共有です。これで終わりです。そのことで、議論よりも互いの立場を深く理解できるようになることが期待できます。
(以下略)
日本語の日常的な用法としては、あまり違和感がないので厄介ですが、英語の意味を考えると、これは対話(ダイアローグ)ではなくて会話(カンバセーション)です。具体的にはお互いの物語に耳を傾けることでしょう。社会構成主義で有名なケネス・ガーゲンの本にはパブリック・カンバセーション・プロジェクトとして紹介されています。要するに、オープンダイアローグとは関係なく行われてきたことを我田引水的に、強引にオープンダイアローグの可能性だと言い張っているわけです。
斉藤環は、もう裸の王様に近い状態でしょう。ひきこもりの権威で筑波大の教授と言うとても偉い学者先生、精神科医なので誰も意見を言わない。講演などで2回ほど直接話を聞いたことがありますが、頭の回転が速い先生で、下手に意見を言うと、ひろゆきみたいに面倒くさそう。精神分析自体、それほど論理的な学問ではないので、精神分析を装った詭弁で大抵のことは論破できてしまうという問題もあります。(ここら辺は、香山リカが異常に持ち上げられたり逆にバッシングを受けたりしたのと似ている部分があるかもしれません)
コロナ禍とか戦争とかがあるたびに、マスコミ関係者が斉藤環のありがたいお言葉を拝聴しに行き、対話と会話をごっちゃにした話をテレビや雑誌が伝える。こういうのは、いい加減やめてほしいものです。
参考文献
現実はいつも対話から生まれる
社会構成主義入門
単行本(ソフトカバー) – 2018/8/26
ケネス・J・ガーゲン (著), メアリー・ガーゲン (著),
伊藤 守 (監修, 翻訳), 二宮 美樹 (翻訳)